薬剤師のための論文の読み方を学ぶ会「サイカケル」始動!

9月28日に記念すべき第1回を浦和で開催致しました。

20161119

15名の参加者は論文を読めるようになりたいと仕事終わりに駆けつけて頂いた意欲的な薬剤師です。今回取り上げた論文は、「Short sleep duration as a risk factor for hypertension」で睡眠時間と高血圧症の相関性について報告しています。結果より年齢が32歳から59歳で睡眠時間5時間未満の方では、高血圧症の発症リスクが上昇することを学びました。働き盛りの年代に睡眠不足は珍しくないでしょう。そんなときに、「睡眠をなるべく多く取りましょう」よりも、「最低でも5時間以上眠るようにしましょう」では患者さんが受ける印象が違ってきますね。

サイカケルは論文独特の論理展開を詳細に解説します。これを知ることにより基本的な英語力で読み解けるようになります。今回の論文要旨の初めの文を例に挙げて考えてみましょう。「Depriving healthy subjects of sleep has been shown to acutely increase blood pressure and sympathetic nervous system activity」 いきなり訳し始めてはいけません。まずはタイトルを証明するために自分であればどんな試験を行うのかを素朴に考えてみます。例えば、「人を集めてきて睡眠時間でグループ分けして経時的に高血圧症の発症を追っていったのでは」と考えるとします。そこで、1行目を読むとびっくり!時制は現在完了ですから既に知られている事実ですが、その内容は睡眠時間を奪うと血圧の上昇と交感神経の活性化を示すと書いてあります。「もうタイトルの事実はわかっているのでは?」と戸惑いながら、「その中で筆者らが示した新たな事実とは?」と自問自答しながら次の文へ進む訳です。読み進めると筆者らはdepriveを「介入」の意味で使っていることがわかります。Depriveを「奪う」と訳すだけでは理解できていることになりません。その言葉を筆者が論理展開の中でどのような位置づけで使用しているのかを理解することが必要です。「介入研究ではわかっているけど、前向き研究(コホート)では明らかになっていないのだろう」と推測できます。この後に興味がある方は、ぜひサイカケルでお会いしましょう!

サイカケルに参加してもすぐに現場で使えるレベルになるわけではありません。大切なことは自宅でも続けることですが、いざ一人で患者さんや医師からの課題を抽出し論文を探索して現場にアウトプットするとなれば、何度も苦難が訪れることでしょう。青年部では同じ志を持った仲間達とネット上でつながる仕組みを構築中です。現場の課題を全て一人で解決できることはあり得ませんから、それを埼玉県内の薬剤師でシェアできれば大きな財産になるに違いありません。

報告者 オレンジ薬局東越谷店 工藤 知也

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